【重要なお知らせ】
ラテン詩と、映像と、音楽を融合させた、
古いシュルリアリズム映画の様な
「墓の魚」ネットコンサートを動画で無料公開中!!
↓↓↓↓フラメンコ、ファド、オペラを、ポルトガル漁師の歌や、蝉の死骸※1の哲学詩や、スペイン神学※2で語り尽くす。
難解で楽しいラテン芝居※3と音楽の世界へ!■死んだ珪藻とマキシロポーダのミサ
■演奏・墓の魚 PEZ DE TUMBA
■出演者一覧
作詞作曲/十九世紀ギター/カリヨン/道化師(歌)/字余りの乞食 [黒実音子]
ポルトガルギター/バテンテギター/Keima Oswald
クラシックギター/リュート/長洲毅志
フラメンコギター/岡田洋輔
チェンバロ/ピアノ(ベヒシュタイン)/山角倫代
ピアノ(ベヒシュタイン)/ポルタティーフオルガン/Ei
ピアノ(ベヒシュタイン)/對馬衣梨
オーボエ/イングリッシュホルン/赤井理紗
第一バイオリン/大原敏生
第二バイオリン/佐藤愉里子
第三バイオリン/田中ひらり
第一ヴィオラ/石山真穂
第二ヴィオラ/下谷岬向
第一チェロ/本橋快
第二チェロ/川島楓恋
第一コントラバス/井口信之輔
第二コントラバス/後藤桃
第三コントラバス/奥山尋冬
アコーディオン/fhi
トランペット/フリューゲルホルン/小嶋洋一
道化師(歌)/天使のロングトランペット/トイピアノ/赤足亀
道化師(歌)/貽貝
道化師(歌)/仕立て屋
道化師(歌)/貧者の魂
道化師(歌)/ペンギン
道化師(歌)/会計士 [太田智子]
道化師(歌)/空威張り屋 [川口翠]
道化師(役者)/錆びた釘 [小川友子]■コンサート内容■
サトゥルニア・ピリに関する14の詩の朗読で進行していくラテン・クラシックコンサート。
破傷風と社会主義・・・
カプノサイトファーガ・カニモルサスの犬の詩・・・
蟇蛙を土に埋める聖母マリア・・・
これ以上ない位のラテン文学的な「墓の魚」公演へようこそ。
MCが全編キリスト教詩(この公演の為に書いた未発表の詩)で語られるという実験的公演!!
鍛冶屋が、鉄を打ち付ける音を聴きながらの魂のミサ(Comedia de óxido)をご堪能あれ。
「墓の魚」文学についての解説はこちら
◆◆詩の解説1[腸抜き肉の事を語る] ◆◆←
昔からスペインやポルトガルでは、信仰、魂の孤独※4、貧困などが芸術の重要なテーマとして、とりあげられます。
なんとも重いテーマだな・・・と思うかもしれませんが、これらのテーマはラテン世界では、必ずしも暗いわけではなく、例えば「死」を陽気にとらえ、人間味あふれる辛辣な皮肉で解釈する面を、多くの南欧芸術※5は持っているのです。「墓の魚」の作品において、死、信仰、貧困、孤独は、ラテン世界を舞台にしたの物語の中で寓意(アレゴリー)※6化され、それらは、奇怪でユーモラスな亡霊※7の形で登場します。
そう。まるで不条理演劇※8!??という様な「墓の魚」の音楽。
これらの作品は、弦楽オケや、フラメンコ奏者、オペラ歌手、道化師達によって歌われ、トラジコメディ(悲喜劇)※9の舞台を作り出します。「墓の魚」の劇の中でキリストは言います。
「人生とはユーモアだよ!!
絶望もまた、この世の歌なんだ。」嘆く社会主義者、
打ち上げられた惨めな珪藻※10、
ファド・マゴチ(蛆虫のファド)※11、
ポルトガル漁師の歌、
棺桶を這う蟹(ネコラ)・・・
そんなこの世の惨めな場所(や土壌生物※12)を、ラテン人独特のキリスト教哲学と、辛辣で陽気な風刺で歌うラテンの物語がここにあります。
その音楽に最もよく登場するのが魔女という存在です。
魔女はキリスト教では教会の追放者としての存在です。
しかし、そんな悪党(ピカロ)な存在を、昔からスペイン人達は、様々な文学や詩の中に登場させ、恐れ、愛して来たのです。
なぜでしょう?それは、彼らが[正当というものから外れた者達の人生の物語]に、惹かれたからではないでしょうか?(これをスペインではピカレスク文学と言います)
「墓の魚」の詩を紐解くと、レコンキスタ※13、移民※14、カルリスタ戦争※15、スペイン内戦などのラテンの歴史への風刺、哀歌が隠されている事がわかります。
そういった政(まつりごと)の敗者、追放者、異端者としての寓意的キャラクターが「墓の魚」における魔女なのです。
「魔女の物語」は人間の魂に問いかけ、再発見する物語かもしれません。
その辛口で難解※16な舞台から、皆さんは何を感じとるでしょうか?また、黒実 音子の作品のテーマは、「古い時代のラテン」なので、18~19世紀の様な、電子楽器を使用しないアンティークな南欧の楽器※17による演奏が再現される所も見所です!!
クラシック、教会音楽、タンゴ、フラメンコ、ジャズ、ファド、シャンソン、オペラなどの各演奏陣が集まり、「墓の魚」の音楽世界は贅沢に表現されます。弦楽オケの他に、日本には数台しかないと言われている南イタリアの民族楽器キタラ・バテンテや、ポルトガルの港町の音楽ファドにしか使用されないと言われている「悲しみの弦楽器」ポルトガルギター、ヨーロッパでバッハよりも古い時代から使用されていた弦楽器リュート、ギターの祖先となる19世紀ギターなども登場いたします。
このような楽器陣の揃うコンサートは、なかなかありません!!!黒実音子の作品は、オペラ歌手や、古めかしい芝居をしながら歌う道化師達※18が歌い手として登場します。
しゃがれ声、戯け、語り・・・。
様々な個性豊かな道化師達の歌は、古き良きラテンの世界を、キリスト教徒達の魂の渇きを、まるでアレホ・カルペンティエル※19や、ラウル・ブランダン※20の文学の様な手法で表現します。訳注
※1[蝉の死骸]が語り始めるという戯曲が黒実の作品にある。死骸はこの世のものではない故、世を司る者のしがらみ無く真実を語る事が出来るという話。
※2神学というより、スペイン独特のキリスト教観。辛辣な風刺と混ぜ、諧謔的にこの世を語る。
※3ラテンの定義は曖昧。一般にはイタリア、スペイン、ポルトガル、南米などを指す(場合によりフランス、ルーマニアも入る)
※4[魂の孤独]とは、キリスト教文学的な表現。人の一生は十字架を背負って楽園に向かう孤独な旅である。
※5[南欧]とは南ヨーロッパで、イタリア、スペイン、ポルトガルを指す(場合によって南フランスも入る)。
※6[寓意]とは、絵や物語に[象徴的な別の意味]を含ませる事。
※7この場合の[亡霊]とは、魔女や悪霊を含めた幻想的な表現全てを指している。
※8この世の不条理性を表現する事に重点を置き、物語のリアリティや、論理性を重視しない心の迷宮の様な演劇。
※9スペインはトラジコメディ作品が多く、悲劇的な出来事の中に喜びを見つけたり、喜劇の中に悲しみを見つけたり、複雑な現実世界の中で、悩み、それらをあるがまま受け入れる事に信仰を見出したりする。
※10[珪藻]とは、いわゆる水中のコケや藻の一種。黒実の作品には、この世の残骸(命の虚しさ)の表現として珪藻が多く登場する。
※11ファドとはポルトガルの大衆音楽だが、難解な詩で人生の哀しみが歌われる。[ファド・マゴチ]は、黒実の造語で、メメントモリ(死の哲学)に重点を当てたファドの事。蛆虫(マゴチ)は死骸に涌く事から、死や虚の象徴でもある。
※12黒実の作品には土壌生物や、(原始的な)海洋生物が多く登場する。それらは人間社会のしがらみを介さない真実を告げるメッセンジャーとして、あるいは社会が目を覆う[原始的な死の象徴]として現れる。
※13スペインは一度ムスリム達により侵略され、その後、土地を奪い返(レコンキスタ)し、キリスト教化した歴史がある。
※14スペインやポルトガル人達は南米を植民地にし、移民したコンキスタドール(征服者)達の物語がある。
※15スペインの王位継承戦争。
※16「墓の魚」の物語は、ディズニーの様にわかりやすいものではなく、ボードレールの様な暗号めいた詩の断片で綴られ、演出される為、物語としてわかりにくく、難解と捉えられがち。だが、大事なのはラテン文学的感覚を身に付ける事の方にある。それは即ち、人生をカルペンティエルの様に[墓石の熱情]で語れる事である。
※17「墓の魚」の楽器は、様々な時代のものが混ざり合う。古楽器と呼ばれるものから、フラメンコの楽器まで混在するが、現代のエレキ楽器などは使用しない。またアジアの楽器も使用しない。
※18「墓の魚」の道化師達は、イタリアのコメディア・デッラルテや、スペインのコメディア・デ・サントスの道化師から着想を得ている。
※19キューバの小説家。マジックリアリズムという現実世界を幻想的な手法で表現し、白昼夢、シュルレアリズムの様な世界を作り出す技法の作家。
※20ポルトガルの作家。象徴主義作家。哲学的な作品を描いた作家。